日中の過ごし方

高次脳機能障害のある方の日中活動について
(新型コロナウイルス感染防止に伴う外出制限等への対応)

 新型コロナウイルスによる非常事態宣言に伴い、外出制限が呼び掛けられる中、医療機関での外来リハビリや障害福祉サービスの日中活動にも制限がかかりつつあります。そのような中、高次脳機能障害のある方も日中活動がなくなり、自宅での生活を余儀なくされている方もおいでと思います。

 高次脳機能障害には様々なリハビリテーションや活動を組み合わせて行う「包括的リハビリテーション」の重要性が高いと考えられています。そのような中で、今回のような外出制限は、様々な活動の体験・実施を難しくすることとなり、効果的な回復やリハビリテーションを望まれるご本人、ご家族は不安を抱いていらっしゃると思います。

そこで、日本高次脳機能障害友の会では、自宅でできるリハビリテーションをいくつかご提案したいと思います。

1.生活リズムを作ろう
2.日中活動を作ろう
3.家事をやろう
4.注意してほしい点
5.日課のモデル

<1.生活リズムを作ろう
(1)スケジュール表を利用しよう
1日スケジュール表や週間スケジュール表で日課を管理することで、1日・1週間の見通しを持って生活することができます。
また、頑張りすぎて疲れたときなどは、スケジュール表を振り返ることで、その原因を考えることができます。
朝には1日の予定を見直して、寝る前には翌日の予定を確認するようにしましょう。
1日のスケジュール(PDFファイル)
週間スケジュール(PDF)
(2)夜はしっかり眠りましょう
高次脳機能障害は、脳疲労が生じます。脳疲労を改善するためには睡眠を確保することが最も有効です。
夜更かしせずに、睡眠を十分取るように心がけてください。
(3)ルーチン(一定の)な日課を心がけよう
日課の中に、イレギュラー(慣れていない)な予定があると、慣れていないことに対応することで疲れてしまいます。
日課の大枠を決めて、大きな変化がない日課を組みましょう。
(4)終わりをしっかり決めよう・疲れ(頑張りすぎ)に気をつけよう
活動に夢中になってしまうと、ついつい時間を忘れて夢中になってしまいます。
頑張りすぎてしまうと、易疲労(疲れすぎ)になってしまいます。
何かに取り組む場合には、できるだけ終わりの時間を決めましょう。
また、疲れた際には、終わりの時間にこだわらずに、途中で中断するようにしましょう。
(5)スケジュールを管理するアプリなど
高次脳機能障害がある人の生活支援アプリ「あらた」
グーグルカレンダーを使うと、予定が事前にメールや通知される機能を利用することができます。

2.日中活動を作ろう
座学(座って勉強)とアクティビティ(軽く体を動かす)を組み合わせてみましょう。ただし、勉強するときも体を動かすときも、終わる時間を決めておきましょう(集中しすぎて頑張りすぎてしまうと、易疲労(疲れすぎ)の状態になってしまいます)。また、疲れてしまったときには、終わりの時間を待たずに終了しましょう。
(1)脳のトレーニングをしよう
自宅にある計算ドリルや漢字ドリル、ネット上には様々な脳トレサイトや脳トレアプリがあります。
それらを活用して、脳トレをしてみましょう。
●「やってみようパソコンデータ入力」という障害者職業総合センターが提供しているトレーニングソフトもあります。
(2)軽く体を動かそう
散歩やストレッチなどの運動を行うことは、脳の回復に良いと言われています。
心地よさを感じる程度で構いませんので、運動をしてみましょう。
(3)リラックスする時間を作ろう
心と身体のリラックスは、緊張を強いられる毎日には重要です。
最近は、マインドフルネスやヨガがリラクゼーションの側面から注目されています。

3.家事をやろう
家事は高次脳機能障害を改善する上で非常に有効です。それぞれの家事は、注意・記憶・遂行機能・情報処理能力など、多様な高次脳機能を必要とするためです。自分にできる家事をやってみましょう
(1)朝ゴミ出しをしてみよう
ゴミは、種類別に回収する曜日が異なります(曜日感覚が身につきます)。また、分別する必要があります。朝になって慌てることなく、前日から準備をしておきましょう。
また、ゴミを出すときには、着替えて行きましょう。
(2)洗濯物を干そう・取り込もう
洗濯物を干すことで、巧緻性(細かな作業をする力)や構成力(バランス良く配置する力)が養われます。
洗濯物を取り込むことで、展望記憶(将来行うことを記憶しておく)の保持に役立ちます。洗濯物たたみは巧緻性が必要です。洗濯物を片付けることも、注意(片付け忘れはないか)・記憶(どこに何をしまうか)や遂行機能(どの順番で片付けることが効率的か)に有効です。
(3)家の掃除をしよう
自宅を掃除することは、どこまで掃除をしたのか(記憶力)、ゴミの見落としはないか(注意力)が養われます。拭き掃除は、ストレッチになります。
(4)自分に好きなもの、誰かに食べさせたいものを作ってみよう
料理をすることは、記憶力(手順を覚える)、注意力(火加減と具材に同時に気を配る)、遂行機能(段取り良く物事を行う)ことの練習に繋がります。レシピを見て、手順を確認しながら行いましょう。
(5)家の周りの掃除をしてみよう・庭の草むしりをやろう
家の中だけではなく、家の周りや(庭がある場合は)庭の草むしりをすることで気分転換がはかれます。

4.注意してほしい点
●お昼を一人で食べる際には、薬の飲み忘れに気をつけましょう。
●昼寝などをしすぎて昼夜逆転しないように気をつけましょう。
●疲れや頑張りすぎに気をつけましょう。

5.日課のモデル
社会参加につながるためには、1.規則正しい生活、2.日中活動の確保、を積み重ねていくことが大切です。以下に日課を例示します。

 新型コロナウイルスの影響で、見えないウイルスに翻弄されつつ、外出もままならない日々が続いています。
しかし、平穏な日常を取り戻すまで、平穏な日常を取り戻した後も、新しいリハビリや情報を発信していきたいと思います。
また、皆様からも「こんな工夫をしています」「こういう風に生活しています」「こんなことで困っています」という情報がありましたら、私どもにお教えください下さい。
当事者・ご家族の皆様、拠点機関の支援者、関係者、日本高次脳機能障害友の会が一丸となって乗り越えていきましょう。